医療法人の事業承継と税制について

医療法人の事業承継に係る税制の動向

医療法人の事業承継に伴う税制は非常に複雑となっています。

平成26年度の税制改正で制定した、いわゆる「医療法人における事業承継税制」は平成29年度の税制改正でも期限延長されることとなり、事業承継を検討するにあたっては、現在がまさに一つのいいタイミングともいえます。

「出資持分のある医療法人」を事業承継する場合においては特に税金面で考慮すべき内容が複雑です。

出資持分がある場合、「出資持分のある医療法人」であることを維持しつつ承継する方法と「出資持分のない医療法人」に移行したうえで事業承継する方法があります。

そのため、事業承継方法の検討段階でまずはこの選択について、方針を決めていく必要があります。

 

持分のある医療法人の事業承継に係る税制

「出資持分のない医療法人」は残余財産の帰属先が国・地方公共団体・他の医療機関・医師会等に限定されるため、出資者の財産的価値はなくなります。

このため、一般的に「出資持分のある医療法人」である場合は、「持分あり」を維持したまま承継を検討するケースが多くなります。

維持したままの承継方法としては、現在の院長が「持分」の払戻しや放棄をしたうえで退社することで承継していく方法等が考えられます。

この方法をどのように行うかで、退社する院長、承継者、医療法人のそれぞれにおける税金負担は変わってくるため、細かくシミュレーションを行っていく必要があります。

 

持分のある医療法人の事業承継に係る問題点

持分を維持したままの事業承継については、大きな問題もはらんでいます。

それは、退社する院長の出資持分がとても大きくなっている場合です。

医療法人は配当することができず、いわゆる利益剰余金が累積しているため、院長の出資持分における財産価値が大きくなりやすい傾向にあります。

出資持分が大きくなれば、退社時に払戻しを請求によって非常に大きな資金負担が必要となります。

放棄をするとしても、他の出資者の持分が相対的に大きくなるため、その部分の経済的利益については他の出資者に対する贈与として税金の負担が必要となります。

つまり、今まで安定的、長期的に医療法人を運営していた場合ほど、事業承継の際に発生する資金的な負担が莫大となりやすいといえます。

 

持分のない医療法人へと移行した際の課題

資金的な負担がネックとなった場合、「出資持分のない医療法人」に移行したうえで、事業を次世代に承継していこうと考えた場合はどうでしょう。

「出資持分のない医療法人」に移行するには、出資者の持分すべてを放棄する必要がありますが、全員が放棄した場合でも一定の要件を満たさなければ、医療法人に対して、払戻しをせずによくなった経済的利益について贈与税が課されることになります。

 

医療法人の事業承継税制とは

平成26年度の税制改正において、医療法人の持分に係る事業承継税制が創設されました。

この制度は、事業承継を促進するというよりも「出資持分のある医療法人」が「出資持分のない医療法人」へ移行することを促進する意味合いを強く有しています。

具体的には、この事業承継税制は、厚生労働大臣の認定を受ける等の要件を満たした「認定医療法人」が移行期間中の相続税や贈与税について納税が猶予される制度です。

移行期間内に認定医療法人の持分のすべてを放棄した場合などは、納税猶予の対象となった税額が免除されます。

認定医療法人の認定は平成29年9月30日まででしたが、平成29年度の税制大綱で平成32年9月30日まで延長される予定となりました。

事業承継についてお悩みの医療法人の皆様は一度お気軽にご相談ください。

 

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